14.3. 種の起源
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ラテン語で「種族」または「見かけ」
種を異なった形態により区別するという基本的な考えは直感的であると思われるが、より正式に種の定義を考案することはそれほど簡単ではない
種とは何か
構成員はたがいに、自然に交配し繁殖能力のある(再生産可能な)子孫をつくる可能がある集団
生物学的種概念はどんな場合にも適用できるものではない
繁殖可能性に基づいた種の定義は、無性的にのみ繁殖する生物には適用することができない このような事態に対応して、生物学者は多くの異なる種の定義をつくった
180万種の生物のほとんどは、計測可能な物理的特徴に基づいて名前をつけられている
その他の種を同定するアプローチでは、生物群集内における特別な役割への独自な適応に焦点を絞って、生態的地位を用いる さらに別の種を分類する手法では、種は、共通祖先を共有し、生命の樹において1本の枝を形成する最小限の個体の群とするもの 各々の種概念は、状況やどんな質問に答えるかにより、それぞれ役に立つものである
しかし、生物学的種概念は、どのように別個な生物群が出現し、生殖的隔離により維持されるかに注目した場合に、特に有用 種間の生殖的障壁
近縁種間の個体の交雑を妨げるもの
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生殖的障壁は、接合子(受精卵)形成の前後で、2つに分類することができる 時間に基づく交配の障壁
同じ地域でも、異なった生育環境に生育しているもの
北アメリカのガーターヘビの1種は水中に、近縁な種は陸上にいる 交配可能な個体を認識する特徴も生殖的障壁として機能する
多くの鳥の種ではたとえば求愛行動がたいへん複雑なので、同族の他の種の鳥と見間違うことがない 2種の近縁なカタツムリは、殻の巻き方が逆方向であるため、生殖器官を合わすことができない 配偶子隔離は受精が体外で行われる場合にはたいへん重要 雄と雌のウニでは、卵と精子の表面に付着した種特異的分子が互いに適合したときのみ受精が起こる 種間交配が実際に起き、雑種接合子ができたときに働く
雑種の子孫は生殖的成熟に至る前に死ぬ
あるサンショウウオの近縁種間では、雑種をつくっても子孫は2種間の遺伝的不適合のため正常には発生しない 子孫は生存力のある成体になるが不妊
雑種の第一世代では生存力があり繁殖力があるが、これらの雑種がたがいに、あるいは両親種のどちらかの個体と交配したとき、子孫は虚弱か繁殖力を持たない
ワタの異種間では、繁殖力のある雑種ができるが、その雑種の子孫は生存することができない 生殖的障壁は近縁種間の境界を作り出す
殆どの場合、2つ以上の障壁の組み合わせにより種が隔離されている
種分化の仕組み
多くの種の起源の鍵になるイベントは、集団が親種の他の集団から分割されるときに起こる
遺伝子プールが孤立することにより、分裂した集団は、独自の進化の道をたどることができる そのような生殖隔離は、異所的種分化と同所的種分化という2つの一般的なシナリオから生じる
遺伝子流動をさまたげる主要な要因は、分割された集団を物理的に孤立させる地理的障壁
地理的隔離を伴わない新種の起源
異所的種分化
いくつかの致死地学的プロセスは、集団を2つ以上の隔離された集団に分割することがある
山脈が形成されると、低地だけに生息することができる生物の集団は、徐々に分割されていく
パナマ地峡のような陸橋がつくられると、海の生物はたがいに隔離された2つの集団になる 大きな湖は水位が低下して、いくつかのより小さな湖を形成し、現在の集団が分割されるかもしれない
個体が新しい、地理的に離れた地域に移住して、親集団から隔離されるなら、異所的種分化が起きうる
異所的集団を隔離しておくには、地理的障壁は、どれくらい大きくなければならないか
部分的には生物の移動能力に依存する
松の風によって運ばれる花粉や動物によって運ばれる種子による分布拡大も妨げない 対照的に小さな齧歯類にとっては、深い峡谷や広い川は通過できない障壁になるかもしれない 異所的種分化は、小さな、隔離された集団に起こりやすい
遺伝的浮動と自然選択により、集団の遺伝子プールが大きく変わることが大きな集団よりも起きやすいため 過去200万年前以内に、ガラパゴス諸島にたどり着いた少数の外来動植物は、現在底で見つかるすべての種の起源となった
しかし、新しい種となる各々の小さな隔離された集団の多くは、単に新しい環境で滅びるであろう
フロンティアでの生活は厳しく、大部分の先駆者集団は絶滅する
たとえ小さな隔離された集団が生き残るとしても、それが新しい種に必ずしも進化するというわけではない
集団はその地域環境に適応して、祖先集団と非常に異なるように見え始めるかもしれない
しかし、それが必ずしも新しい種というわけではない
種分化は、隔離された集団と、その親集団の間の生殖的障壁の進化により起こる
種分化が地理的に分離されている間に起こるならば、たとえ2つの集団が後に接触しても、新種はその祖先集団と交雑することができない
同所的種分化
同所的種分化では、たとえ同じ時間と場所に生息しているとしても、新しい種は古い種から出現する
場合によっては、分集団は、異なる生息地(たとえば浅瀬と湖の深い生息地)で食物源を利用するための適応を進化させる 雌が色に基づいて交配相手を選ぶという一種の性選択が、迅速な生殖隔離に貢献することもある しかし、同所的種分化で最もよく観察される仕組みは、1世代で生じる大規模な遺伝子の変化による
生物学者は、細胞分裂過程での誤りにより起源した植物種の多くの例を報告している そのような誤りにより染色体の余分のセットをもつ個体が生産される これは各々の細胞が3セット以上の染色体を持つことをいみする
このような新種は親種との間に稔性のある雑種を生じることができない 生殖隔離1世代で、地理的隔離なしで起こるので、これは同所的種分化のよい例
実際、大部分の倍数体種は、2つの親種の交雑に起因する
世界で最も広く栽培されるコムギは20種により代表される
人類は少なくとも1万1000年前に中東で、野生のイネ科草本からコムギを栽培化した https://gyazo.com/80476de3770cdb05eefc701062e22c4d
種分化はどのように進むか
生物学者は、野外観察を行い、進行中の進化を調査するための実験を考案する
しかし、進化の証拠の多くは化石の記録から得られる
長時間ほとんど変化しない、あるいは平衡であり、突然の種分化という出来事によって中断される状況を指す
多くの化石種は岩石層の中に突然現れて、いくつかの層(層序)をとして基本的に不変のまま存在し、現れたのと同じくらい突然に消える https://gyazo.com/ea63efedb59882ccc077ca60743e8e57
断続平衡モデル
各系統には移行期がない
新種は、出現したままでほとんど変わらない
漸次モデル
種がその地域環境に適応していくのに従い、差異は集団中で少しずつ進化する
新種は祖先集団から徐々に進化する
大きな変化(種分化)は、多くの小さな変化の安定した蓄積によって起こる
断続平衡と漸次的なパターンは、それぞれ新種ができるのにどのくらいの時間が必要であると主張しているか
種が500万年間存在し、しかし、その体の形の大部分の変化はその存在時間の差異所の5万年間(1%)の間で起きると仮定する
このような短い時間は化石の層序ではしばしば識別することができない
化石に基づくと、種は突然現れて、絶滅するまでほとんど変化しないように見える
たとえそのような種でも、化石が示すよりもゆっくり起源したのかもしれない
化石がもっと漸次的な変化を示す種では、いつ新しい生物学的種ができたかは正確に述べることはできない
そのような種分化が比較的ゆっくり起こる可能性はあり、おそらく何百万年もかかったであろう
どれくらい種は急速に進化して、それから大部分の存在期間で基本的に不変のままであろうか
急速な種分化が起こることは確かに知られている
植物やときには動物の倍数体における種分化は突然起きる 遺伝的浮動や自然選択は、数百世代で隔離された集団の遺伝子プールに重要な変化を起こすことができる 種分化の進み方に関係なく、種は多様化し、違いは蓄積してより顕著になる
そして結局、祖先とは異なる新しい生物群に至る
さらにもう1つの群が多くの新種を形成して、もう1つの群では絶滅して子孫種を失うかもしれない
複数の種分化と絶滅イベントの蓄積効果は、化石記録で語られる劇的な変化を形作る